夫婦の老後資金の必要額は? 理想のセカンドライフのための備えとは

「人生100年時代」と言われるほど長寿化が進む現代。お金の心配をすることなく、長い老後を夫婦で安心して過ごすために、老後資金の準備は欠かせません。どの程度のお金を準備しておく必要があるのか、その準備方法もあわせて解説します。
目次
夫婦二人の生活に必要な老後資金の目安
2019年に金融庁が公表した報告書*がきっかけとなり、「老後資金2,000万円」という言葉が世間を騒がせましたが、実際に老後の生活資金はどのくらいかかり、公的年金でどこまでカバーできるのでしょうか。
- 出典:金融審議会│市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理
老後の生活費は毎月約26万円
総務省の調査*によると、高齢無職世帯の夫婦の生活費は月額平均約26万円となっています。その内訳は以下の通りです。
非消費支出(所得税、住民税、社会保険料など) | 29,092円 | |
消費支出 | 235,615円 | |
食料 | 65,319円 | |
住居 | 13,625円 | |
光熱・水道 | 19,905円 | |
家具・家事用品 | 9,385円 | |
被服及び履物 | 6,171円 | |
保健医療 | 15,181円 | |
交通・通信 | 28,071円 | |
教養娯楽 | 24,239円 | |
その他の消費支出(理美容費、交際費など) | 53,717円 |
- 出典:総務省|家計調査年報(家計収支編)2018年 家計の概要
現在の支出と比べ多く感じるでしょうか、少なく感じるでしょうか。住居費が少ないのは、持ち家があり、家賃の支払いや住宅ローンの返済がない世帯が調査対象に多いことを示唆しています。あくまで調査時点(2018年)における平均値となりますので、老後の住居はどうするのかも含め、何にどのくらいのお金をかけるのかは、各家庭で話し合いましょう。
公的年金で賄えるのは約20万円/月
現行の制度では、公的年金は65歳から受け取れるようになります(1961年4月1日以前に生まれた男性の方〔女性は1966年〕は、生まれ年に応じて65歳以前から一部の厚生年金を受け取れます)。
受け取れる年金の平均額は、平成30年度の実績で厚生年金受給者(会社員、公務員)が月額約14.4万円、国民年金受給者(自営業者、専業主婦など)が月額約5.6万円となっています*。すなわち、夫が会社員、妻が専業主婦だった世帯で、ひと月に合計約20万円受け取れる計算になります。
加入できる年金制度は20歳以降の働き方によって異なり、保険料を納付した期間や金額によっても受給額は変わります。実際に自分が受け取れる年金額は、日本年金機構の「ねんきんネット」や、毎年の誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認しましょう。
- ねんきん定期便について詳しくはこちら(『保険相談ナビ』のページに遷移します)。
- 出典:厚生労働省|平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
家計を見直し、早めに老後資金の準備を
老後の収入の大部分を占める公的年金額は約20万円。さらに、年金以外の収入が平均2万円*となっているため、1ヶ月あたり約4万円不足する計算となります。65歳の退職以降、セカンドライフが20~30年続くと仮定すると、不足額の合計は約1,000~1,400万円、これに医療・介護費用など予期せぬ費用を加味すると合計約2,000万円を老後の生活資金として準備する必要があると言えるでしょう。
大きな金額のように感じられますが、30代の方なら30年、40代の方でも20年程度準備する期間が残されています。毎月の家計を見直し、無理のない範囲で積み立てれば、老後資金の準備は十分にできるでしょう。
老後資金を準備する方法
老後資金の主な準備方法には「退職金」「私的年金(企業年金、個人年金)」「投資」「保険」などさまざまな選択肢があります。
勤務先の制度を活用する
会社員の場合、勤務先に退職金制度や企業年金制度、財形貯蓄制度などが整備されている場合があります。企業によって制度の有無、内容が異なりますので、就職時・転職時にはよく確認しましょう。
■退職一時金
勤続年数や役職に従い、退職時に一定額を受け取れる制度です。勤続年数が20~30年以上になると、1,000~2,000万円程度のまとまった金額を受け取れることもありますが、逆に勤続年数が短いと支給対象外となったり、大きく減額されたりするケースがほとんどです。支給テーブルは企業によって異なるほか、受け取り方法が一時金と年金から選べる場合もあります。
最近では退職一時金制度を、次にご紹介する確定給付企業年金や確定拠出年金に移行する企業が増えています。また新興企業などでは、元々退職一時金制度を導入していないところも多いようです。
■確定給付企業年金(DB)
従業員が将来受け取る「給付額」があらかじめ決まっている企業年金制度(=Defined Benefit Plan)です。掛金の拠出から、管理・運用、給付にいたるまで、企業側が責任を負います。年金資産は一括して運用されるため、個人別の残高は確認できませんが、転職時には脱退一時金相当額を転職先の確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)に移換することができます。
■企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業が拠出する「掛金」があらかじめ決まっている企業年金制度(=Defined Contribution Plan)です。掛金の拠出を企業が行う点は同じですが、運用指示は従業員自らが行い、運用成績によって将来受け取れる年金額が変動するのが特徴です。
個人別に年金口座があるため年金資産の残高が確認でき、転職時には転職先の確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)に移換することもできます。近年、退職一時金や確定給付企業年金(DB)の代わりに導入する企業が増えています。
■財形貯蓄
財形貯蓄制度は、企業が毎月の給与や夏・冬の賞与から一定額を天引きし、従業員の資産形成を支援する制度です。貯蓄目的により「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3種類があり、60歳以降に年金として受け取ることを目的としたのが「財形年金貯蓄」です。
積立期間は5年以上で、預貯金だけでなく有価証券や保険に投資することもできます。「財形住宅貯蓄」と合わせて貯蓄残高550万円までが非課税ですが、年金以外の目的で払い戻した場合は課税されます。
個人で用意する
公的年金や企業年金だけでは不十分な場合には、個人で老後資金を準備する方法もあります。
■iDeCo(個人型確定拠出年金、個人型DC)
個人で掛金を拠出し、運用方法を選ぶ私的年金制度です。掛金と運用益の合計額を基に給付金を受け取ることができます。掛金(上限額あり)が全額所得控除の対象となるほか、運用益(分配金と値上がり益)も非課税となりますので、税制上のメリットが大きい制度となっています。受け取る際も、年金の場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となり、税負担がなくなるか軽減されます。
■つみたてNISA(積立型少額非課税投資制度)
NISAとは、購入した株式や投資信託の運用益が一定期間非課税となる制度です。NISAには一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類の口座がありますが、老後資金づくりには長期投資に適したつみたてNISAがおすすめです。
一般NISAで購入した株式や投資信託(年間120万円まで)に対する運用益が最大5年間非課税になるのに対して、つみたてNISAで購入した投資信託やETF(年間40万円まで)に対する運用益は最大20年間非課税になります。なお、一般NISAとつみたてNISAの両方の口座を持つことはできず、どちらか一方を選んで運用することになります。
■個人年金保険
契約時に定めた年齢(65歳など)から一定期間、あるいは生涯にわたって毎年一定額の年金が受け取れる貯蓄型の保険です。被保険者が年金受取開始前に亡くなった場合には、支払った保険料に応じて死亡給付金が支払われたり、年金受取期間中に亡くなった場合にも、あらかじめ保証された期間は年金が支払われたりするなど、死亡リスクに対する遺族への保障が手厚いのが特長です(商品により違いがあります)。
より高い利回りを追求したい場合は、運用リスクも高くなりますが、変額個人年金や外貨建個人年金といった商品もあります。
■積立定期預金
「運用リスクを取りたくない」「万が一に備え資金は引き出しやすいほうがいい」という方は、毎月一定額が定期預金口座に自動で振り替えられる「積立定期預金」を利用する方法もあります。普通預金よりわずかですが利回りが高く、金融機関によっては1,000円単位など少額から積み立てられるため、手軽に始めやすい貯蓄方法です。
まとめ
お金の心配をせずに、安心して老後生活を送るために、今からできることはたくさんあります。選択肢が増えている今の時代だからこそ、自身の生活に合った老後資金の準備方法をおさえておきましょう。また、家計を見直し、無理なく老後資金を準備するには、お金の専門家であるファイナンシャル・プランナーへの相談がおすすめです。下記よりお気軽にご相談ください。
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